老いることは、誰にでもやってきます。
人間の根本的な四つの苦しみ、
「生」、「老」、「病」、「死」の中の一つでもあり、
この世に生を受けた者であれば、
どんな人でも平等に起こることです。
若い時は、テレビの老後の生活の特集などを見て、
「なんか大変だなぁ」と、他人事のように感じていました。
20代初めから30代半ばまで、
13年間はイギリスにいて、
イギリスでも日本企業で、働いたことはあります。
日本に帰国してからは、会社勤めもしました。
40代は会社勤めをしていて、
老後というより、自分のやりたいことは何だろうと、
自問自答を繰り返していました。
生きていくためのお金を稼ぐことが最優先になり、
仕事が忙しくかった50代は、漠然と老後を考えていました。
まだまだ活躍している実感があり、
定年後に対する具体的な行動は、
特に何もしていませんでした。
リストラにもあって、
自分で独立する自営業もやってみましたが、
結局、その時は成功することはできませんでした。
会社勤めをしていたので、
定年があるということは、わかっていました。
貯蓄をしたり、個人年金保険に入ったりして
老後はゆったりと暮らせるよう、計画している人もいます。
家族については、
一度イギリスで結婚したのですが、
子供は持ちませんでした。
そしてその後、離婚して日本に帰国しました。
老後もひとりで生活していくことを
覚悟しなければいけないと思っています。
定年後はゆったり暮らすなどという
期待できる貯金や年金はありません。
60代の同年代と話をすることがあったのですが、
親の面倒をみなければならないこととか、
子供が何をしているなどの話が中心で、
自分自身の話をする人が、ほとんどいませんでした。
年相応といったことが、
重視される風潮があると感じます。
世間が考える60代や老後のイメージにあっていれば、
それが幸福だと思うように、強制されているような気がします。
家族団らんで、夫婦、親子、孫など親戚の仲が良いことは、
幸せの一つの形だと思います。
それが最高の幸せで、
全員がそれを目指さなければいけないのか?
そうでない人たちは、不幸になってしまうのか?
そうではないと思います。
年を取ったというだけで、若い頃のような
自分の望みを言ってはいけないのか?
最終的に、死ぬときに、人生を振り返ったとき、
何を思うのかが、問われているような気がします。
私がイギリスにいたとき、
イギリス国内旅行で町や村を歩き回り、
ベッドアンドブレックファースト(B&B)に
泊まることがありました。
ベッドアンドブレックファースト(B&B)とは
ほとんどが個人宅の数部屋を宿泊場所としている
小さな宿泊施設で、朝食サービスが付いていることが通常です。
ある夫婦のベッドアンドブレックファースト(B&B)に泊まった時、
その夫婦と話をする機会がありました。
夫は55歳だけれど、若い時にできなかった
医学の勉強をして、これから医者になるのが夢だと
教えてくれました。
最初に話を聞いたときは、
「へぇー」と他人事のように思いましたが、
この夫婦が夢を語っている姿が、
すごく素敵で印象的でした。
日本では、まず否定的な考えが先にきて
そんな年からやってもしょうがないとか
できるわけないと一蹴されてしまいます。
でも、夢があると人間生き生きします。
いくつになっても、死ぬまで夢をみること、
ワクワクする気持ちがあって、当然だと感じます。
できるかもしれないし、できないかもしれない、
でもやってみたいという気持ちが、
その人の生きている証明になると思います。
今までの人生を振り返ってみて、
結果的に上手くいかなかったこともあるけど、
その時にできる最善の決断をしてきたと、
後悔をする気持ちはないです。
何かあったらどうしようという不安をいつも抱えて
先細りの老後にだけはしたくないです。
給与を多くもらっていたときは、収入が少なくなることに、
恐怖に近いものを感じていました。
自由な時間を多く持った今の生活は、最低限の収入になりました。
でも、これでも生きていけるとわかったら、
ここから増やせばいいだけと思うと、とても気が楽になりました。
希望をもって、自分の可能性を信じて、
ワクワクして毎日を過ごしたいと、
心から思えるようになりました。
目指しているのは、生涯現役ですが、
死ぬまで求められる人であることは、
理想とするところです。